一般の消費者が不動産の取引を行うときには
さまざまな法律が関係してきます。

・宅建業法
・借地借家法
・不動産登記法
・消費者契約法

など、国土交通省の資料に挙げられているだけでも
15種類以上にのぼります。

その中でも、最もかかわりの深い法律が「民法」です。
今回は不動産にまつわる意外な民法判例や
法務省の改正法資料について紹介します。

10月に迫っている宅建試験にも役立つ内容ですので、
ぜひ最後まで読んでみてください。

不動産に関する面白い民法判例

不動産取引は生活に密着しており、
また高額な取引になりやすいためにトラブルに発展しやすいといえます。
それだけに、多くの判例が残されています。
中には面白い結論となった判例も数多く存在しますので、
今回はその一端を紹介します。

婚姻関係破綻後の自宅の明渡請求

夫婦仲が悪くなり、いつしか別居。
こうなると元の生活に戻ることは難しく、
離婚の話し合いに発展することが多くなります。

このような時に、自分の所有でない自宅に夫婦の一方が住み続け、
所有者の方が出ていってしまうケースがあるのです。
こんなケースでは、「なんで私の家にあなたが居座っているの?
という言い分が生じてくるのは想像できるでしょう。

東京地裁平成25年2月28日判決では、
夫がほかの女性と不倫して子供までもうけ、
不倫相手と子供と同居するために出ていった
というケースが争われました。

夫は妻に対して
「自分の家にいつまで住んでいるんだ」
と建物の明渡請求をしたのですが、
裁判所は夫婦の同居・協力・扶助義務(民法752条)と
黙示の使用貸借契約(民法597条)の成立を根拠に、
夫の明渡請求は権利濫用(民法1条3項)
であるとして許されないとしました。

一方で、東京地裁平成24年2月9日判決では、
自宅の共有者である妻と母親が夫の暴力に耐えかねて別居し、
夫に対して自宅の明渡請求をした事案では
まったく逆の結論としており、妻と母親の明渡請求が認められています

民法597条2項但書では、使用収益に足りる期間を経過したときには
直ちに目的物の返還を求めることができるとしています。
今回の事案においては、使用貸借関係は夫の暴言・暴力によって
信頼関係がすでに破綻し「使用収益に足りる期間は終了した」として
本条項を類推適用し、妻と母親の明渡請求を認めたのです。

同じような事案でも、当事者の行動を考慮した結果、
全く違う判例になるのは興味深いですね。

相続発生後の不動産の果実

民法上「果実」とは、物から生じる収益のことをいいます。
農園から生じる果物は文字どおり「果実」にあたりますが、
牧場で飼う牛が産み出す牛乳、
不動産でいえば土地・建物の賃料が「果実」に当たります

問題となったのは、相続発生後、遺産分割協議が終了するまでに
収益不動産から生じた賃料は誰のものかという点です。
民法909条では「遺産分割の効力は相続時にさかのぼる」とされているため、
遺産分割協議で決定した所有者が相続時からの賃料も
受け取るという考え方が自然とも思えます。

しかし、平成17年9月8日の最高裁判決では、
不動産と不動産の賃料は別個の権利であるとして、
原則通り各相続人が法定相続分に従って相続するとしました。

しかしこの判決に拠れば、不動産を遺産分割で取得できない相続人は、
遺産分割を長引かせれば長引かせるほど多くの賃料を受け取ることができる
ということになりますよね。

したがって実務では、遺産分割協議書の中に、
相続開始後の賃料債権についても
不動産を取得した相続人に帰属させる
という文言を盛り込むことが一般的になっています。

次回も不動産民法について解説をします。

 


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