生産緑地問題に対処するための新制度

確かに、生産緑地が一気に市場に売りに出されれば、地価の下落は避けられません。

この影響を緩和するために、行政は新しい制度を導入してその対策に乗り出しました。

具体的には、平成29年に特定生産緑地制度を新設するとともに関連税制を整備することで、緩やかに生産緑地制度を新しい制度に移行しようとしたのです。

 

特定生産緑地制度の創設

生産緑地が特定生産緑地に指定されると、生産緑地が解除され買取の申し出を行う時期が10年間延長され、その後10年経過後はさらに延長することができます。

その間の所有者の税制優遇や営農義務・開発行為の制限等については、生産緑地と変わりません。

特定生産緑地の指定を受けない、もしくは10年経過後に再度の指定を受けなければ、以後、特定生産緑地の指定を受けることはできないため、少しずつ生産緑地は減少していくことが考えられますが、減少のスピードは新制度によってかなり緩やかになったといえます。

 

生産緑地に関連する税法の改正・整備

生産緑地に適用されていた優遇税制を、特定生産緑地にも適用できるように、関連する税法が整備されました。

これにより、今まで通り生産緑地農家は贈与税・相続税の軽減が受けれられるほか、固定資産税についても軽減が受けられるようになりました。

また、期間満了後に特定生産緑地に指定されなかった場合は、贈与税・相続税の優遇は受けられませんが、急激な変化を緩和するために、固定資産税は5年間で宅地並みの評価に戻していく措置が取られました。

 

生産緑地農家が迫られる選択肢

生産緑地農家は、30年の期間満了にともなって、特定生産緑地の指定を受けるか、そのまま生産緑地のままで期限を迎えるかの選択に迫られることになります。

特定生産緑地の指定を受ければ、これまで通りの税優遇を受けられますが、営農義務や開発行為の制限もまた継続します。

現状維持を洗濯すれば、期間満了後に行政への買取申し出が受け入れられないことを確認したのちに、自由に開発・売買をすることができるようになります。

一方で、固定資産税は5年間で宅地並みの評価に戻されるほか、贈与税・相続税の優遇制度は受けられなくなります。

生産緑地農家は将来の生活設計や健康状態、農業継続の意欲、家族の意思などを勘案してどうするのかを決めることになるでしょう。

 

生産緑地問題が地価に与える影響

当初は多くの生産緑地が売りに出されるのではないかと心配になっている不動産業者もいたようですが、特定生産緑地制度などの新しい制度が導入されたことによって急激に地価が下落するという心配は和らいだようです。

しかし、現在の不動産相場はかなりの高値圏内にあるために、今のうちに売却してしまおうとと思っている所有者も多いことでしょう。

実際に、宅地化されて一戸建ての分譲開発が行われている生産緑地も出てきています。今後の動向にも注目したいところです。

 

焦らずじっくり対策を考える

都市部で生産緑地に指定されている農地はかなり多く、一気に市場に放出されれば、地価の下落は免れないところでした。

しかし特定生産緑地制度の導入などによって、そのリスクは薄らいでいます。

これから不動産を購入、売却しようとしている人にとっては、今後について考える余裕が生まれました。

行動を焦らずに、じっくりと次の一手を探っていく時期であるといえるでしょう。

 


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