不動産経営にかかわる資格といえば宅建士や不動産鑑定士が有名ですが、近年では業務の細分化に伴ってさまざまな資格が設けられています。今回は、不動産経営にかかわる資格の業務内容や難易度等について、最新情報を交えて解説します。

業務の細分化・専門化で多彩な不動産資格が登場

現在では売買、賃貸借、物件管理、不動産開発など多岐にわたる不動産業務を不動産業者間で分業することが多くなっています。その意味で不動産業務はより細分化・専門化しているといえるでしょう。

そのため、不動産経営において生じるさまざまな問題やトラブルに適切に対応するためには、相応の専門的知識が求められるようになりました。このような背景から、法制度の整備もすすみ、不動産に関する知識・技術があることを証明するさまざまな資格が誕生したのです。

不動産経営にかかわる資格8選

不動産経営にかかわる資格は、どのような業務を行うために設けられた資格かということに着目するとわかりやすいでしょう。ここでは8つの代表的な不動産資格についてご紹介します。

宅地建物取引士

宅地建物取引士(宅建士)は宅建業法に基づく国家資格です。
宅建業の免許を取得するために必ず専任の宅建士を置かなければならず、契約時の重要事項説明、重要事項説明書・売買契約書への記名は宅建士の独占業務とされています宅建士は宅建業を営むための必要不可欠の資格といってよいでしょう。

宅建士は、毎年20万人前後の人が受験する人気かつ日本最大規模の国家試験です。不動産業のみならず、金融業、建築業、また小売業・飲食業でも店舗開発にかかわる人たちなど、さまざまな業界の人が受験しています。

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行うことを独占業務とする国家資格です。
不動産の鑑定評価書は、地価公示や相続税・固定資産税の標準地の評価、裁判上の地価評価など公的なもののほか、Jリート等の不動産ファンド、金融機関の担保評価における重要資料として用いられます。

土地家屋調査士

土地家屋調査士は、土地の表示に関する登記手続きやそれに付随する測量、筆界特定、筆界に関する紛争解決の相談等を行う専門家です。表示登記申請手続きの代行は土地家屋調査士の独占業務となっているため、分筆や合筆、筆界特定を伴う表示登記は司法書士ではなく土地家屋調査士に依頼します。
測量士も測量業務を行いますが、橋や道路、建築物の測量が中心です。土地家屋調査士は登記申請業務を行うという点で異なります。

管理業務主任者

管理業務主任者は、おもにマンション管理業を行うために必要な国家資格として、2001年に誕生しました。管理業務主任者は、マンション管理業者がマンションの管理組合と管理受託契約を締結する際の重要事項の説明、重要事項説明書・契約書への記名、管理業務の報告を行うことを独占業務としています。
マンション管理会社は、管理組合30組合ごとに1名の管理業務主任者を置くことが求められているために、管理会社にとっては必須の資格であるといえます。

マンション管理士

マンション管理士は、マンションの管理組合やマンションの住民の側に立ってマンション管理のサポートをする業務を担う国家資格として、管理業務主任者と同様に2001年に設置されました。「マン管」の愛称で親しまれています。
名称独占資格であるため、マンション管理士以外の者が「マンション管理士」もしくは紛らわしい名称等を用いることは許されません。
すでに宅建士、管理業務主任者である人が、自らの業務範囲を広げるために資格を取得するケースが多いようです。

賃貸不動産経営管理士

2021年に新しく国家資格として認められた資格で、賃貸管理業務を行う事業所に置かなければならない「業務管理者」の登録要件として認められています。
一定の条件を充たす宅建士も業務管理者として登録できますので、業務管理者としての種々の業務は、賃貸不動産経営管理士の独占業務というわけではありません。しかし、80%以上の不動産所有者が賃貸管理会社に管理を委託し、賃貸管理を主業務として行っている不動産業者も多い現状からすれば、これからますます注目を集める資格だといえるでしょう。

米国公認不動産経営管理士

米国公認不動産経営管理士(CPM)は、IREM(全米不動産管理協会)が認定する不動産の経営・管理(プロパティマネジメント)に関する最高峰の資格といわれています。歴史は古く、1933年の金融恐慌をきっかけにIREMが設立され、1935年にCPMが誕生しました。現在では2万人以上のIREM会員、8,000人以上のCPMが存在し、不動産経営に関する高い倫理基準と業界標準を保持しています。

公認不動産コンサルティングマスター

公認不動産コンサルティングマスターは、不動産の有効活用や投資運用、相続対策等におけるコンサルティングの知識・能力を有することを証明する資格です。以前は「不動産コンサルティング技能登録者」という名称でした。

不動産ファンド(不動産特定共同事業)や不動産投資顧問業等を行う際の業務管理者となるための要件を満たす資格のひとつとして認められているため、不動産ファンド業界では重要な資格と位置付けられています。

不動産資格の難易度

不動産系の資格の中でも不動産鑑定士は公認会計士・税理士などの難関資格と並ぶトップレベルの難易度を誇ります。不動産業務を行いながらのステップアップとして受験するというよりは、最初から不動産鑑定士を目指して試験勉強をする人が多いようです。
土地家屋調査士も専門性が高く難易度は高め。登記法などの法的知識のほか測量や製図などの知識・技術も求められるため、ほかの不動産系資格とはやや異質といえるでしょう。

そのほかの試験については、試験科目や内容が異なるために一概に比べられませんが、宅建士が不動産資格のみならず法律系資格の登竜門といわれています。まずは宅建士を取得してから、業務の専門性に応じてほかの資格についても取得するケースが多くなっています。
2021年から国家資格となった賃貸不動産経営管理士についてはこれから注目の資格ですが、合格率が30%前後と高いところからすると、宅建士を取得する前の入門的位置づけといえそうです。

不動産資格はますます注目度“高”

時代の変遷に伴い不動産経営に関する業務は多様化し、所有者、住人、管理組合などさまざまな立場の人がサポートを必要としています。サブリースや小口不動産投資、民泊など様々な契約形態が生まれるなかで以前には見られなかったトラブルも散見されるようになりました。宅建士がこれからも不動産資格の中心であることは変わりませんが、業務内容の複雑性に応じてダブル資格・トリプル資格を保有する専門家が頼られる時代が来ているのかもしれません。

 

 


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このブログを書いた人

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