賃貸経営の初心者には夜逃げなんて想像がつかないかもしれません。しかし、長い間多くの物件を管理していると入居者の夜逃げに遭ってしまうことは珍しくありません。今回は、入居者に夜逃げされた時の対処法と事前対策について詳しく解説します。

夜逃げのサインを見逃さない

賃貸オーナーは日常の賃貸管理を管理会社に委託しているため、管理会社からの連絡で初めて夜逃げに気づくケースも多くみられます。しかし、いったん夜逃げに遭ってしまうと、そのあとに新しい入居者を迎えるまで半年近くを要するため、できるだけ早く夜逃げに気づいて迅速に対応することが大切です。
一般的に夜逃げのサインには以下のようなものがあります。

・家賃の滞納があり入居者と連絡がつかない
・電力メーターが長期間回っていない
・郵便ポストがいっぱいになって広告などが詰め込まれている
・住戸に立ち入った形跡がない

住戸への立ち入りがあったかどうかをチェックするには、ドアに手紙を挟んで置いたり、ドアとドア枠にテープ等を貼っておくなどの方法が考えられます。

夜逃げされたときの対処法と注意点

実際に夜逃げされてしまったと気づいても、すぐに賃貸借契約の解除、残置物の撤去というわけにはいきません。契約を一方的に破棄することはできませんし、他人の所有物を勝手に廃棄することもできないからです。
夜逃げに気づいたときには、以下の手順を迅速・確実に実行しましょう。現状を把握し、法的な手続きに従って冷静に対応すれば、必ず解決できます。

連帯保証人や緊急時連絡先に連絡をする

夜逃げに遭ったときには、入居者本人と連絡がつかないことがほとんどです。まずは契約時に開示してもらった連帯保証人や緊急連絡先・勤務先に連絡をして、入居者の居場所や安否を確認します。家賃の滞納分があれば、滞納の総額とこれから残置物処理等にかかる費用の概算を算出して連帯保証人に連絡し、費用負担の可能性があることを伝えるべきでしょう。

本当に夜逃げかどうかの確認は住戸の中に入って確認しますが、黙って入るのは不法侵入の可能性が否定できません。また、住戸内で事件・事故が発生した可能性もあります。最悪の状況も想定しつつ警察に連絡をし、警察官立ち合いのもとに住戸の中を確認すべきです。
夜逃げされたときには、住戸の内部が少なからず損傷している場合があります。住戸確認の際には損傷の程度も確認し、修繕費がどれぐらいかかるのかのあたりをつけておくとよいでしょう。

契約書を確認しての裁判上の手続きをとる

入居者と連絡が取れない状況が続くのであれば、賃貸借契約の解約の手続きをします。
契約書を確認して解約や残置物の処理についての条項がどのようになっているかを確認して、裁判所に賃貸借契約の解除および建物明渡しを求める訴訟を提起します。
もっとも、訴状を送ろうとしても、多くの場合入居者の居場所が判明しません。そのような場合には、「公示送達」の手続きによって裁判を開始します。
民事訴訟は、裁判所が被告に訴状を送達することで開始しますが、公示送達とは、裁判所の所定の場所に必要事項を公示して、被告に訴状を送達したのと同じ効果を生じさせるものです。必要期間は公示から2週間です。
裁判開始から解除が認められるまで、一般的には3~4か月を要しますので、その間の空室コストが発生することは考慮に入れておく必要があります。

残置物について強制執行の申し立てを行う

解除が認められても、他人の所有物である残置物を勝手に処分することはできません。具体的な対処方法としては、賃貸借契約の解除および建物明渡しが裁判上で認められたことをもって強制執行手続きの申し立てを行います。
強制執行は申し立てから物件明渡しの催告、催告に応じない場合には断行(実際の残置物の搬出・保管・処分)という手続きを経て実行されます。申し立てから実際に廃棄物が処分・売却されるまで、およそ2~3か月です。
実際の強制執行は裁判所の執行官が行いますので、賃貸オーナーは執行官と協議を重ねながら執行手続きを見守ることになります。

建物明渡し訴訟・残置物処理の金額感

建物明渡しから残置物の処分までにかかる費用としては、大きく分けて訴訟費用と残置物撤去費用があります。
訴訟費用については弁護士に依頼した場合の例ですが、おおむね30万円から50万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
残置物の撤去費用については、残置物の量によってかなりの差があります。産廃処理業者に依頼する場合には、一般的に1立法メートル(1リューベ)当たりの単価が設定されており、1リューベ10,000円から15,000円程度です。アパートの1室であれば10万円程度で済みますが、一軒家丸ごとだと30~40万円ほどかかります。

夜逃げの事前対策としてできること

実際に夜逃げに遭った時には、法的手続きに頼ることになります。一方的に自ら賃貸借契約を解除し残置物を撤去することは、「自力救済」として法律で禁じられています。
夜逃げの事前対策としてできることは、入居者の選別、法的手続きをスムーズに行うための事前準備のほか、対応費用の捻出方法を考えておくことの3つが考えられます。

入居審査を厳しめに行う

物件の特徴やエリア等にもよりますが、入居審査を厳しめに行ってもらうよう管理会社に依頼しておくことが考えられます。年収や現在の住居形態、引っ越しの理由、家族構成、勤務先などを聞き取り調査することのほか、身分証明書や印鑑証明書等の書類を提出してもらうことは必須です。
物件の特性によっては、すこし入居条件を甘めに設定しなければならないこともあるかもしれません。その際には、夜逃げ等のトラブルがあることを想定して賃料設定を考える必要があるでしょう。

契約文言に対処方法を具体的に盛り込む

夜逃げに遭った時の法的手続きを円滑に行うために、あらかじめ契約文言に残置物処理の方法などについて具体的に定めておくのも一つの方法です。
もっとも、契約書に裁判上の手続きを避けるための条項を盛り込んだとしても、自力救済にあたるとして無効と判断されることがあるため、文言の検討は慎重に行わなければなりません。
よく、明渡し後の残置物の処理についてあらかじめ所有権を放棄する条項が盛り込まれていることがありますが、この条項は任意に建物を明け渡した時に適用される条項であって、夜逃げの場合には安易に適用できないとされています。
今までの解決事例や契約文言例を検討しつつ、弁護士や司法書士などの専門家と相談して契約書ひな形を作成するのがよいでしょう。

家賃保証会社や火災保険の活用

多くの夜逃げの場合には家賃の滞納や住戸の損傷、汚損が伴っている場合が多いため、家賃保証会社の保証サービスや火災保険の特約等で対応できるようにしておきましょう。
家賃保証サービスには、滞納家賃はもちろん住戸の損傷の修繕費用についても補償内容に含まれるものがあります。また、住戸の修繕費用については火災保険でまかなえることもあるのです。
事前に契約内容を確認しておき、保証内容が薄いと感じる場合には追加の保証を保険担当者に相談してみることをおすすめします。

専門家のアドバイスを受けて冷静に対処する

夜逃げは突然発生するため、事前に防止することは困難です。あらかじめ対応手順を定めておくことで、いつ夜逃げに遭っても冷静に対処できるでしょう。
また、具体的な対処方法としてはどうしても法的手続きに頼ることになりますので、契約文言や事前対策ついては、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。夜逃げに遭ってしまったらできることは限られていますので、手続き面や費用面について心配がないように事前準備しておくことが大切です。

このブログを書いた人

コンスピリート・ブログライター
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